山猫は歌姫をめざす
第5章 女王への道

【1】不可侵の座の意味


       1.

『獅子族』の“支配領域”であるゴールドシティで、『女王』を決める大会は行われる。
各“劇場”の推薦枠は一人と決められており、例外はない。

『女王』の“地位”に就けるのは全国でただ一人。表の世界で“歌姫”と言えば、『女王』のことである。
つまり、『女王』になるということは、“歌姫”の「顔」になるということだ。

『女王』を決める大会が、来年の一月に行われるとの通知が“第三劇場”の支配人である響子(きょうこ)の元へ届いていた。

(実力だけで言えば、当然シェリーなんだけどねぇ……)

響子の執務机上の端末画面にはシェリーの顔写真と全身写真、それにプロフィールが映しだされている。

『女王』を決める審査員は、政府関係者で占められている。
彼らは“異種族間子”を『女王』に据えることを、避けようとする傾向にある。

(そのうえ、本人にその気がないんじゃ、打つ手なしだよ)

シェリーは“第三劇場”に所属することに固執していて、『女王』になることに興味がなかった。

《支配人としては》稼げて有り難いが、『女王』経験がある《響子個人の想い》からすると、なんとも惜しいと言わざるを得ない。

(となると、(あや)か……)

キーを叩く。綾の写真とプロフィールがでてくる。
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