山猫は歌姫をめざす
†††††
「留加? ……あの、そろそろ起きた方がいいかと思うんだけど……」
遠慮がちにかけられた声に、留加は目を覚ました。やわらかくて温かい感触が、頭の下にあった。
(眠って……しまったのか……)
未優の歌う『アヴェ・マリア』の旋律が心地よく、少し眠気を感じていたために、寝てしまったのだろう。
「留加? 起きた?」
瞬間、留加は唐突に理解した。
がばっと身を起こし、呼びかけの声の主を見やる。びっくりしたように、留加を見返す、緑色の瞳があった。
「……っ……すまない!」
言うなり留加は立ち上がり、そのまま防音室を出て行ってしまった。
未優は、あ然として、それを見送っていた。まさか、あれほど留加が動揺するとは。
(なんか、留加って時々、意味不明……)
人の手を思いきり握っておいて忘れていたり。散々っぱら人の膝の上で寝ておいて、顔を真っ赤にしてみたり。
未優は急におかしくなった。くすくすと笑いだす。
(ホント、留加ってば、変なの……!)
笑いながら未優は、胸のうちに積もり積もった留加への想いに気づく。ふいに、胸がしめつけられた。
(あたし、やっぱり留加のことが好き……!)
───そうして未優は、自らの胸のうちで秘めておかなければならないことを、またひとつ、自覚したのであった。
「留加? ……あの、そろそろ起きた方がいいかと思うんだけど……」
遠慮がちにかけられた声に、留加は目を覚ました。やわらかくて温かい感触が、頭の下にあった。
(眠って……しまったのか……)
未優の歌う『アヴェ・マリア』の旋律が心地よく、少し眠気を感じていたために、寝てしまったのだろう。
「留加? 起きた?」
瞬間、留加は唐突に理解した。
がばっと身を起こし、呼びかけの声の主を見やる。びっくりしたように、留加を見返す、緑色の瞳があった。
「……っ……すまない!」
言うなり留加は立ち上がり、そのまま防音室を出て行ってしまった。
未優は、あ然として、それを見送っていた。まさか、あれほど留加が動揺するとは。
(なんか、留加って時々、意味不明……)
人の手を思いきり握っておいて忘れていたり。散々っぱら人の膝の上で寝ておいて、顔を真っ赤にしてみたり。
未優は急におかしくなった。くすくすと笑いだす。
(ホント、留加ってば、変なの……!)
笑いながら未優は、胸のうちに積もり積もった留加への想いに気づく。ふいに、胸がしめつけられた。
(あたし、やっぱり留加のことが好き……!)
───そうして未優は、自らの胸のうちで秘めておかなければならないことを、またひとつ、自覚したのであった。