山猫は歌姫をめざす
「……これは、おれなら『G線上のアリア』で弾く。君は、どうだ?」
「えーと……テンポにもよるかな? 弾いてもらってもいい?」
留加がヴァイオリンを奏で、未優がそれに合わせて歌い、語る。
響き合う音色と歌声が大気で溶け合って、澄んだ青空へと吸い込まれていく。
(うわー……気持ちいい……)
生演奏と合わせること。
だが、それに以上に留加の奏でる音色が、未優の声を、どこまでも高みへと連れて行ってくれそうに思えた。
留加の方も、それは同じだった。
未優の歌声を初めて聴いた時、なぜか急にヴァイオリンを弾きたくなった。彼女と合わせたいと、思った。
共鳴することにも予感があった。しかしこれは、想像以上だ──。
未優の“奏者”を務めることに不安がないと言ったら嘘になる。彼女は『山猫』の“純血種”で……しかも、本家の当主の娘だという。
前途は、多難だろう。
栗色の髪の少女は、その緑色の瞳に、青い空を映し、歌い続けている。なんの迷いもなく。
今はそれでいいと、留加は思った。
誰かと奏でて、初めて満たされた胸の内の想いは、昔抱いた感情に、どこか似ていると自覚しながら。
「えーと……テンポにもよるかな? 弾いてもらってもいい?」
留加がヴァイオリンを奏で、未優がそれに合わせて歌い、語る。
響き合う音色と歌声が大気で溶け合って、澄んだ青空へと吸い込まれていく。
(うわー……気持ちいい……)
生演奏と合わせること。
だが、それに以上に留加の奏でる音色が、未優の声を、どこまでも高みへと連れて行ってくれそうに思えた。
留加の方も、それは同じだった。
未優の歌声を初めて聴いた時、なぜか急にヴァイオリンを弾きたくなった。彼女と合わせたいと、思った。
共鳴することにも予感があった。しかしこれは、想像以上だ──。
未優の“奏者”を務めることに不安がないと言ったら嘘になる。彼女は『山猫』の“純血種”で……しかも、本家の当主の娘だという。
前途は、多難だろう。
栗色の髪の少女は、その緑色の瞳に、青い空を映し、歌い続けている。なんの迷いもなく。
今はそれでいいと、留加は思った。
誰かと奏でて、初めて満たされた胸の内の想いは、昔抱いた感情に、どこか似ていると自覚しながら。