山猫は歌姫をめざす
息するようにあっさりと言いきった薫に、先日の自分が重なって未優はめまいがした。
留加のあの時の心情が、身に染みて解った気がする。
「好きって……そんな簡単に言うけど、会って間もないのに……」
言いながら未優は、留加に対し「付き合って」と言った自分を思いだして、語尾をにごらせてしまう。
時間は関係なく、好きと思う気持ち。
「理由が必要?」
首を傾けて、薫はいたずらっぽく未優を見返した。
それから、ふいと視線を斜め上に向け、片手を顔の高さに上げる。
「君の歌声に魅せられたから。
照れながらも得意気に笑った顔がイイ感じだったから。
僕に怒鳴った声も表情も、可愛いかったから。
『山猫』の“純血種”なのに“歌姫”を目指してるっぽいところが──」
指を折り曲げ数えあげていた薫は、ふたたび未優を見た。ふっと笑う。
「ねぇ、あといくつ理由が必要?」
「──そういう問題ではないだろう。
君も未優も、一族の中では貴重な“純血種”だ。軽々しく好きだの嫌いだのと、口にすべきではないんじゃないのか」
あきれたように、留加が言った。未優の告白をはね付けた時と、同じ口調で。
(あの日と同じだ……)
未優の胸は痛んだが、当の薫はおおげさに溜息をつき、肩をすくめた。
「異なる“種族”の恋愛は、タブーだって? 誰が決めたの? 世間一般の常識ってヤツ?
まぁ、確かに“掟”で禁止されてる“領域”はあるみたいだけど……。ようは、避妊さえしとけばいいだけの話でしょ?
結婚も、確かに“純血種”同士じゃ難し──」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
留加のあの時の心情が、身に染みて解った気がする。
「好きって……そんな簡単に言うけど、会って間もないのに……」
言いながら未優は、留加に対し「付き合って」と言った自分を思いだして、語尾をにごらせてしまう。
時間は関係なく、好きと思う気持ち。
「理由が必要?」
首を傾けて、薫はいたずらっぽく未優を見返した。
それから、ふいと視線を斜め上に向け、片手を顔の高さに上げる。
「君の歌声に魅せられたから。
照れながらも得意気に笑った顔がイイ感じだったから。
僕に怒鳴った声も表情も、可愛いかったから。
『山猫』の“純血種”なのに“歌姫”を目指してるっぽいところが──」
指を折り曲げ数えあげていた薫は、ふたたび未優を見た。ふっと笑う。
「ねぇ、あといくつ理由が必要?」
「──そういう問題ではないだろう。
君も未優も、一族の中では貴重な“純血種”だ。軽々しく好きだの嫌いだのと、口にすべきではないんじゃないのか」
あきれたように、留加が言った。未優の告白をはね付けた時と、同じ口調で。
(あの日と同じだ……)
未優の胸は痛んだが、当の薫はおおげさに溜息をつき、肩をすくめた。
「異なる“種族”の恋愛は、タブーだって? 誰が決めたの? 世間一般の常識ってヤツ?
まぁ、確かに“掟”で禁止されてる“領域”はあるみたいだけど……。ようは、避妊さえしとけばいいだけの話でしょ?
結婚も、確かに“純血種”同士じゃ難し──」
「そういうことを言ってるんじゃない!」