山猫は歌姫をめざす
「『禁忌』の自由恋愛は処罰の対象となっていますが、既婚者が『禁忌』に就いてはならない、とはありませんからね。
実際、数十年前に“第二劇場”にいた『禁忌』は、人妻でしたし」
「ありゃ『狐族』の“純血種”だったからだろ。……まぁ、反論材料にはなるだろうがね。
そのあたりの《知識》は、お前さんとこのが詳しいだろうし、アタシも心配してないさ。ま、いいようにやっとくれよ」
「恐れ入ります」

清史朗は微笑んで、深く頭を下げる。
シェリーもおもむろに、響子に一礼してみせた。


†††††


“女王選出大会”は、第四次審査まで行われる。
各審査ごとにテーマが出され、それに見合った演目をそれぞれが選び、“舞台”を行う。

テーマは、第一次審査のみ発表されていて、第二次からは、審査を通過した者に知らされるようになっていた。

未優はいま、第一次審査を控え留加と“第一劇場”の舞台袖にいた。

(なんか、シェリーさんみたいな人ばっかりだったな……)

さきほどロビーに集っていた各“劇場”の“歌姫”は、歳の頃は25、6で、スタイルも容貌も、皆、抜群に良かった。

(あたし、浮いてないかな……?)

場違いな所にいる気がして、未優はなんだか落ち着かなかった。
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