山猫は歌姫をめざす
未優は方向音痴の上に地図が読めない。
手にした携帯情報端末が、横から慧一に奪われる。おおげさなため息が、その口から漏れた。
「ここまで来て、なぜ足が止まるんだ。目と鼻の先だろう。
もう、いい。
社会勉強だと思って、なるべく手をださずにいようと考えていたが付き添って来た以上、そうはいかないようだ。俺の気がもたん。
──行くぞ」
画面を一瞥した慧一は、押しつけるようにして未優に端末機を返した。
(う~、いちいち腹の立つ男! なのに、反論できない自分のバカさかげんが、ホント情けないったら!)
スタスタと歩きだした慧一の背中を思いきりにらみつけ、未優はそのあとに続く。
留加がそれを見て、静かに言った。
「……君の婚約者は、君を怒らせるのが趣味のようだな」
「性格悪過ぎでしょ? メチャクチャ顔にでてるけど……って」
(……婚約者?)
「なんで留加、知ってるの……?」
「ん? ……あぁ、本人に聞いた」
慧一を指差す留加に、未優は怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にして、弁明する。
「あの……別に、あたしあいつのコト何とも思ってないし、婚約っていったって、時間稼ぎっていうか形だけっていうか、だから、あの……」
「──すまないが、おれにとってはどうでもいい話だから、そんなに一生懸命説明しなくても、大丈夫だ」
手にした携帯情報端末が、横から慧一に奪われる。おおげさなため息が、その口から漏れた。
「ここまで来て、なぜ足が止まるんだ。目と鼻の先だろう。
もう、いい。
社会勉強だと思って、なるべく手をださずにいようと考えていたが付き添って来た以上、そうはいかないようだ。俺の気がもたん。
──行くぞ」
画面を一瞥した慧一は、押しつけるようにして未優に端末機を返した。
(う~、いちいち腹の立つ男! なのに、反論できない自分のバカさかげんが、ホント情けないったら!)
スタスタと歩きだした慧一の背中を思いきりにらみつけ、未優はそのあとに続く。
留加がそれを見て、静かに言った。
「……君の婚約者は、君を怒らせるのが趣味のようだな」
「性格悪過ぎでしょ? メチャクチャ顔にでてるけど……って」
(……婚約者?)
「なんで留加、知ってるの……?」
「ん? ……あぁ、本人に聞いた」
慧一を指差す留加に、未優は怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にして、弁明する。
「あの……別に、あたしあいつのコト何とも思ってないし、婚約っていったって、時間稼ぎっていうか形だけっていうか、だから、あの……」
「──すまないが、おれにとってはどうでもいい話だから、そんなに一生懸命説明しなくても、大丈夫だ」