山猫は歌姫をめざす
「ごめんなさい! お待たせしましたっ……」
あわてて出た廊下に留加が立っていて、未優は一瞬、惚けてしまう。
(わーん……やっぱ留加、カッコ良すぎる……)
立て衿ヒダ胸のシャツにブラックの蝶ネクタイ、カマーバンドというスタンダードな燕尾服をさらりと着こなしている。
上着のボタンを留めていないのは、演奏の妨げにならないようにするためだろう。
清史朗ほどの長身ではないが、姿勢が良いせいか凛々しいその様が舞台上で映えるのは、間違いなさそうだ。
「あぁ、良くお似合いですね、その桜色のドレス。とても可愛らしい」
「えと……ありがとうございます」
ゆったりと清史朗に微笑まれて未優は社交辞令と思いつつも、照れくささに頬が染まった。
「では、舞台袖までご案内致します。
演目は『人魚姫』でしたね。変更はございませんか?」
「はい」
清史朗は先を歩きながら、未優に今日の日程を話す。
実技試験ののち、ふたたび私服に着替え、支配人の執務室にて面談、それから、専属医による身体検査があること。
何か質問は? との言葉に、未優はおずおずと切りだす。
「あの……その身体検査で落とされるってコト、ありますか? 身長とか体重の制限とか……」
一番訊きたい「胸」についてはさすがに省く。清史朗は首を振った。
「いいえ。そういう規定はございません。……ですが」
あわてて出た廊下に留加が立っていて、未優は一瞬、惚けてしまう。
(わーん……やっぱ留加、カッコ良すぎる……)
立て衿ヒダ胸のシャツにブラックの蝶ネクタイ、カマーバンドというスタンダードな燕尾服をさらりと着こなしている。
上着のボタンを留めていないのは、演奏の妨げにならないようにするためだろう。
清史朗ほどの長身ではないが、姿勢が良いせいか凛々しいその様が舞台上で映えるのは、間違いなさそうだ。
「あぁ、良くお似合いですね、その桜色のドレス。とても可愛らしい」
「えと……ありがとうございます」
ゆったりと清史朗に微笑まれて未優は社交辞令と思いつつも、照れくささに頬が染まった。
「では、舞台袖までご案内致します。
演目は『人魚姫』でしたね。変更はございませんか?」
「はい」
清史朗は先を歩きながら、未優に今日の日程を話す。
実技試験ののち、ふたたび私服に着替え、支配人の執務室にて面談、それから、専属医による身体検査があること。
何か質問は? との言葉に、未優はおずおずと切りだす。
「あの……その身体検査で落とされるってコト、ありますか? 身長とか体重の制限とか……」
一番訊きたい「胸」についてはさすがに省く。清史朗は首を振った。
「いいえ。そういう規定はございません。……ですが」