山猫は歌姫をめざす
答えはひとつだった。他にはあり得ない。
そんな未優に、響子はおおげさに溜息をついてみせた。

「口ではなんとでも言えるんだよ、お嬢ちゃん。あんたは“歌姫”っていう職業を、解っちゃいないで、ここまで来ちまった。世間知らずも甚だしいってもんだ。

もちろん、それはお嬢ちゃんだけの責任じゃない。親や周りの人間が教えるべきことだったんだ。“歌姫”の裏稼業は、暗黙の了解のもとに行われているんだからね」

バサリと響子が乱暴に髪をはらうと、手首の三連ブレスレットが涼やかな音を立てた。

「いいかい、お嬢ちゃん。
“歌姫”っていうのはね、政府(おかみ)のお許しを得ている娼婦(しょうふ)……公娼(こうしょう)なんだよ」



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