神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
「……ここに、なんと書いてあるか、分かるか?」

布を広げて見せ、男が問う。
咲耶はいぶかしく思いながら、布に目を落とした。

(って、さっき見たときは、ただの真っ白な布にしか……)

「それが、そなたとハクコの仮初めの契りの証だ。真の証となるかは、そなたたち次第だ」

(──あ)

「この文字は、そなたにしか見えぬ。解るか? これが、ハクコの名だ。
そなたが呼ぶことで、初めてあれは、名をもつことになるのだ。

──ただし」

そこで言葉を区切って、男は咲耶の瞳をのぞきこむ。

「それは、口に出しては、ならぬ」






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