神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
和彰の眼差しに一瞬だけひるんだものの、このような場所で情欲に流されてはまずいだろうと、咲耶は必死で理性を総動員する。
そんな咲耶の言い訳に、問題ないといわんばかりに和彰が言った。

「心配せずともこの森のなかにヒトはいない。居るのは獣や力の弱い(あやかし)くらいだ」

言って、ふたたび唇を寄せようとする和彰に、咲耶は天を仰いだ。

「もうっ、そういうことじゃなくてっ! ダメったら、ダメーっ!」

──すでに藍色に変わってしまった空に、咲耶の絶叫が、乾いた音と共に吸い込まれていった。





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