神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
単純に疑問に思った咲耶に、今度は犬貴が応えてくれた。
「え? よけいイミ解んないんだけど。どういうこと?」
「──我らが『不浄のモノ』であるからでございます」
告げた“眷属”の片方の前足が、スッと横に空を切る。見えない力によって、対面した異形のモノらは一斉に排除された。
「ハク様のご加護を受けている咲耶様の御魂は、清浄であるがゆえに、我らの憑依を拒む状態にあらせられるのです」
堅い文言に、咲耶の眉根が思いきり寄せられたのを、背後の“眷属”は感じたらしい。かすれた声音が、説明を加えた。
「あ~、平たく言うと、だな」
右前足の拳で一体、回転した勢いの右後ろ足で一体。さらに、やや離れた位置にいた五六体の餓鬼に、小さな雷のような攻撃を放つ。
そうして目につくモノすべてを掃滅した犬朗が、咲耶を振り返った。
「いまの咲耶サマの“影”に俺らが入るには、旦那の清い力が強すぎて消されちまうかもってコトさ」
「そんなっ……」
非難めいた反応をした咲耶に、赤虎毛の犬は頭の後ろをかきながら、うーんとうなる。
「……旦那なりの気遣いだろ。
自分が側に居てやれないから、咲耶サマによくないモノが憑かないように、ってさ」
犬朗の言葉に、咲耶ははっとした。自らの唇に手をやる。
(『私の想いをお前の魂に刻んだ』っていう、あれ……?)
和彰の『気持ち』がこめられたくちづけだとばかり思っていたが。どうやら、それだけではなかったようだ。
「しっかし、キリがねぇな……!」
舌打ちしてぼやく犬朗に、さすがの犬貴も同意する。
「我らの体力を消耗させるのが狙いなのだろう。そろそろ違う方法を考えるべきか……」
崩れた石の山から、ふたたび這い出る気配をうかがわせるモノらに目を向け、精悍な顔つきをした黒い虎毛犬が独りごちる。
繰り返される餓鬼の攻撃が、単調で力も弱いのは、咲耶でも解る。
しかし、いくら打ちのめしても向かってくる敵に対し、終わりが見えないことに焦りが生じた“眷属”たちが、根負けしそうになるのは否めないだろう。
「え? よけいイミ解んないんだけど。どういうこと?」
「──我らが『不浄のモノ』であるからでございます」
告げた“眷属”の片方の前足が、スッと横に空を切る。見えない力によって、対面した異形のモノらは一斉に排除された。
「ハク様のご加護を受けている咲耶様の御魂は、清浄であるがゆえに、我らの憑依を拒む状態にあらせられるのです」
堅い文言に、咲耶の眉根が思いきり寄せられたのを、背後の“眷属”は感じたらしい。かすれた声音が、説明を加えた。
「あ~、平たく言うと、だな」
右前足の拳で一体、回転した勢いの右後ろ足で一体。さらに、やや離れた位置にいた五六体の餓鬼に、小さな雷のような攻撃を放つ。
そうして目につくモノすべてを掃滅した犬朗が、咲耶を振り返った。
「いまの咲耶サマの“影”に俺らが入るには、旦那の清い力が強すぎて消されちまうかもってコトさ」
「そんなっ……」
非難めいた反応をした咲耶に、赤虎毛の犬は頭の後ろをかきながら、うーんとうなる。
「……旦那なりの気遣いだろ。
自分が側に居てやれないから、咲耶サマによくないモノが憑かないように、ってさ」
犬朗の言葉に、咲耶ははっとした。自らの唇に手をやる。
(『私の想いをお前の魂に刻んだ』っていう、あれ……?)
和彰の『気持ち』がこめられたくちづけだとばかり思っていたが。どうやら、それだけではなかったようだ。
「しっかし、キリがねぇな……!」
舌打ちしてぼやく犬朗に、さすがの犬貴も同意する。
「我らの体力を消耗させるのが狙いなのだろう。そろそろ違う方法を考えるべきか……」
崩れた石の山から、ふたたび這い出る気配をうかがわせるモノらに目を向け、精悍な顔つきをした黒い虎毛犬が独りごちる。
繰り返される餓鬼の攻撃が、単調で力も弱いのは、咲耶でも解る。
しかし、いくら打ちのめしても向かってくる敵に対し、終わりが見えないことに焦りが生じた“眷属”たちが、根負けしそうになるのは否めないだろう。