神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
瞬時に伸ばされた白い水干の腕と、気遣う声音。深い色合いをした瞳が、咲耶をのぞきこむ。

「……大丈夫よ」

潔癖で真摯(しんし)な変わらない眼差しに、咲耶は微笑み返した。ふたたび、強い口調で告げる。

「私に……ううん、みんなにも、あなたが胸に秘めてきたこと……話してくれる?」

黒虎毛の犬の目が、何かを思うように閉じられた。しばしののち、心を決めたようにまっすぐに咲耶を見返してくる。

「仰せのままに、……咲耶様」

咲耶が気に入っている、その呼び方で。





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