神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
視界の端に自らの白い後ろ足が映り、宙に浮いているのが分かった。

『──どうぞ、そのまま』

ふいに、耳になじむ()がした。伝わるのは、自分を遠ざけた声と同じ色をした、想い。

『いまは、しばらく……そのままご辛抱くださいますよう……』

どうか、と、懇願する()が響く。()は聞き取れるが、正確な意味が解らない。
のどの奥から威嚇音を発すれば同じ内容の()が繰り返される。

『どうか、ハク様……──』

それが、自分に向けられたものであることだけは、間違いなかった。


       *



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