神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
「──その通り。これは綾乃の“神ノ器”だ」
「肉体って、ことですよね? それが、どうしてここに……?」
頭のなかの情報を整理しながら確認をしたものの、さらなる疑問符が浮かびあがってしまう。
「え、でも待って。それなら私が見た人は、本当に綾乃さんなの……?」
咲耶の目の前にいる人物と、あの時、咲耶と和彰の前に現れた人物が、同一人物ではないように思えてくる。
それは単純に、眼差しの強さの有無かもしれないが。
(よくよく思いだしてみると、もう少し大人びてたような気もするし……)
「“神獣ノ里”で出会ったというのなら、綾乃であろうな。今の綾乃は、常世にも現世にも居れぬ存在ゆえ」
咲耶の不審をよそに、愁月があっさりと断定する。付け加えられたひと言に、咲耶はこめかみを押さえた。
「常世にも現世にもいられないって……まさか」
昨日、犬貴から聞いた“神逐らいの剣”の話。“神ノ器”に唯一、再生を許さない傷をつけることが可能だと、言っていなかったか?
(私の“神力”でも再生できないのかって、私、犬貴に訊いた……)
愁月の顔に、ふたたび微笑が浮かぶ。咲耶の思考を読み取ったように。
「そう、この傷痕は“神逐らいの剣”によって付けられたもの。
綾乃は、再生を許さないと言われる剣に、魂魄を切り離されてしまったのだ。
この“神ノ器”に宿るは魄──“核”と呼ばれる生命の源があるのみ。そなたが出会った綾乃は魂──“精神体”だ」
咲耶にも解るようにとの配慮からか、説明しながら話す、愁月の言葉の行き着く先。
「私に……綾乃さんの『再生』を行えってことですか」
咲耶がこの世界にやって来て、和彰の名を呼べるようになってから、繰り返し告げられる自分の利用価値。
それを、今回ほど苦く思ったことはない。
「どうしてっ……」
一度は押さえ込んだ、自分のなかにある、愁月に対する憎悪にも似た憤り。咲耶の身のうちが、燃えるようにたぎった。
「どうして和彰に、あんなことをさせたんですか!
綾乃さんを『再生』させたいのなら、私に言ってくれれば良かったじゃないですか!
それを、こんな風に……和彰や犬貴たちを操って……私を従わせようだなんて……!」
「肉体って、ことですよね? それが、どうしてここに……?」
頭のなかの情報を整理しながら確認をしたものの、さらなる疑問符が浮かびあがってしまう。
「え、でも待って。それなら私が見た人は、本当に綾乃さんなの……?」
咲耶の目の前にいる人物と、あの時、咲耶と和彰の前に現れた人物が、同一人物ではないように思えてくる。
それは単純に、眼差しの強さの有無かもしれないが。
(よくよく思いだしてみると、もう少し大人びてたような気もするし……)
「“神獣ノ里”で出会ったというのなら、綾乃であろうな。今の綾乃は、常世にも現世にも居れぬ存在ゆえ」
咲耶の不審をよそに、愁月があっさりと断定する。付け加えられたひと言に、咲耶はこめかみを押さえた。
「常世にも現世にもいられないって……まさか」
昨日、犬貴から聞いた“神逐らいの剣”の話。“神ノ器”に唯一、再生を許さない傷をつけることが可能だと、言っていなかったか?
(私の“神力”でも再生できないのかって、私、犬貴に訊いた……)
愁月の顔に、ふたたび微笑が浮かぶ。咲耶の思考を読み取ったように。
「そう、この傷痕は“神逐らいの剣”によって付けられたもの。
綾乃は、再生を許さないと言われる剣に、魂魄を切り離されてしまったのだ。
この“神ノ器”に宿るは魄──“核”と呼ばれる生命の源があるのみ。そなたが出会った綾乃は魂──“精神体”だ」
咲耶にも解るようにとの配慮からか、説明しながら話す、愁月の言葉の行き着く先。
「私に……綾乃さんの『再生』を行えってことですか」
咲耶がこの世界にやって来て、和彰の名を呼べるようになってから、繰り返し告げられる自分の利用価値。
それを、今回ほど苦く思ったことはない。
「どうしてっ……」
一度は押さえ込んだ、自分のなかにある、愁月に対する憎悪にも似た憤り。咲耶の身のうちが、燃えるようにたぎった。
「どうして和彰に、あんなことをさせたんですか!
綾乃さんを『再生』させたいのなら、私に言ってくれれば良かったじゃないですか!
それを、こんな風に……和彰や犬貴たちを操って……私を従わせようだなんて……!」