神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
セキコは、菊に持ってこさせた筆記具で、さらさらと和紙に筆を走らせ、日本地図のようなものを記した。
ようなもの、としたのは、それが咲耶の知っている『日本の形』と微妙に違っていたからだ。
「この大きな形の世界を“陽ノ元”といってね。これを統治するために昔の権力者が、いくつもの国に分けて、それぞれの国に“国司”と“国獣”を遣わしたの。
で、アタシ達のいるのがココ──“下総ノ国”ってわけ。
“下総ノ国”のいまの“国司”は萩原尊臣。“国獣”は白・黒・赤の三体の虎……つまり、アタシらのことね」
地図に×印を入れ、余白に咲耶が分かるように美麗な楷書で『陽ノ元』『下総ノ国』『国獣』……と、記していく。
「ちなみに、“下総ノ国”同様、他の国にもそれぞれに“国獣”がいるわ。お隣の“上総ノ国”は、狼だそうよ。
そして、この“国獣”……国のなかにあっては“神獣”と呼ばれるアタシ達は、民に恵みをもたらす存在で、“国司”と共に国を豊かにするべく尽力している。
……というのが、“陽ノ元”全体の、建前論になるわ」
「建前……ですか」
「まぁ、よくあることよねぇ~。実際は“国司”と“国獣”は対等じゃない。特に、この“下総ノ国”にあっては“国獣”は“国司”の、かなり下の位に置かれてる。
ハクの儀式を三度で打ち切るなんてしたのが、いい例よ。あれは尊臣が勝手に決めたこと。
本当は、“神獣”には“神獣”に見合う“花嫁”を、【探す】機会が与えられるはずなんだから!」
憤然と言いきり、
「ま、結果としては、三度目のアンタがハクの“花嫁”になれたから、良かったんだけどね」
と、付け加えた。
「で、その上、恩恵を受けるはずの当人たちからは、『民に恵みをもたらすどころか、結託して搾取してるくせに、偉っそうにしててムカつく!』……って。思われてるのよね~、やんなるわぁ」
ようなもの、としたのは、それが咲耶の知っている『日本の形』と微妙に違っていたからだ。
「この大きな形の世界を“陽ノ元”といってね。これを統治するために昔の権力者が、いくつもの国に分けて、それぞれの国に“国司”と“国獣”を遣わしたの。
で、アタシ達のいるのがココ──“下総ノ国”ってわけ。
“下総ノ国”のいまの“国司”は萩原尊臣。“国獣”は白・黒・赤の三体の虎……つまり、アタシらのことね」
地図に×印を入れ、余白に咲耶が分かるように美麗な楷書で『陽ノ元』『下総ノ国』『国獣』……と、記していく。
「ちなみに、“下総ノ国”同様、他の国にもそれぞれに“国獣”がいるわ。お隣の“上総ノ国”は、狼だそうよ。
そして、この“国獣”……国のなかにあっては“神獣”と呼ばれるアタシ達は、民に恵みをもたらす存在で、“国司”と共に国を豊かにするべく尽力している。
……というのが、“陽ノ元”全体の、建前論になるわ」
「建前……ですか」
「まぁ、よくあることよねぇ~。実際は“国司”と“国獣”は対等じゃない。特に、この“下総ノ国”にあっては“国獣”は“国司”の、かなり下の位に置かれてる。
ハクの儀式を三度で打ち切るなんてしたのが、いい例よ。あれは尊臣が勝手に決めたこと。
本当は、“神獣”には“神獣”に見合う“花嫁”を、【探す】機会が与えられるはずなんだから!」
憤然と言いきり、
「ま、結果としては、三度目のアンタがハクの“花嫁”になれたから、良かったんだけどね」
と、付け加えた。
「で、その上、恩恵を受けるはずの当人たちからは、『民に恵みをもたらすどころか、結託して搾取してるくせに、偉っそうにしててムカつく!』……って。思われてるのよね~、やんなるわぁ」