神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
『突然ですが、11月**日に結婚式やります(≧ω≦)
招待状、今度会えそうなときに渡すね! とりあえず、報告☆』

幸せ全開の内容だ。

咲耶には、高校時代から仲良くしている友人が5人ほどいたが、そのうち4人は結婚し、すでに子供がいた。
つまり──最後に残った友人のひとりに、先を越されてしまったのだ。

(私、なんにも悪いコトしてないよ……。なのに、なんで……?)

合コンで知り合った彼氏……と、いえるかどうか分からない相手──何しろデートといえるものは3回、あとは一週間に4、5通ほどのメッセージのやりとりをしていたくらいだ──とは、現在、音信不通だった。

咲耶のほうで「ちょっといいかも……」と、本格的に付き合いたいと考えていた矢先、ぱたりと連絡が、途絶えしまったのだ。

(ま、キスもしてない間柄じゃ、男友達にケが生えた程度だってくらい、分かってるわよ)

それでも、今度こそ、と、期待していた。

(ひょっとしたら一生付き合っていける相手かもしれないって、思い始めてたのに……)

──時刻は、午後9時50分。
咲耶は40分近く、駐車場に停めた自分の車のなかで、過ごしていたことになる。

その間、家からかかってきた電話は5回以上。
さすがにもう、帰ったほうがいいだろう。

(気が重いけど、私が帰る場所はあのボロ家しかないんだもんね)

仕事、家族、友人、恋人──。

どれひとつ、何ひとつとっても咲耶にとっては憂うつで満足のいかない現状だが、自分がこれまで生きてきた結果なのだから、仕方ない。

そう思って、大きな溜息をつく。
おもむろにキーを回し、帰途につくことにした……。





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