神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
咲耶は、ハクコの手を両手でつかむ。少し気恥ずかしさの残る頬をぎこちなく動かし、ハクコを見つめた。
「いまの、人の姿に“化身”したあなたも、“神獣”である白い虎のあなたも、どちらも同じ存在でしょ? だから……私は、どっちのあなたも……好き、だわ」
口にするのは照れくさかったが、ハクコの誤解をとくには、きちんと伝えるべきだろう。
そう思う咲耶に対し、ハクコは自らの手にある咲耶の手指を引き寄せ、胸もとへと導いた。もう一方の手を、重ねる。
「獣の私も、ヒトの私も、どちらも私であることには変わりない。お前のいう通り、それが真理なのだ。だから、お前に【どちらの私】も気に入ってもらえたのなら……嬉しい」
ハクコは、最後のひとことをかみしめるように言った。咲耶の手を包むハクコの手に、やんわりとした力がこめられる。
「師の……言った通りだ。お前といると私は、今までに抱いたことのない心持ちになる」
向けられる微笑みは、無防備だった咲耶の心をたやすくさらった。めったに見せることのない、やわらかな表情。
「お前は人の形をした器のような私のなかに、優しい彩りを注いでくれる……」
静かに響く低い声音が頬に触れたかと思うと、次いで唇にぬくもりを感じていた。
確かめるように触れて、かすめとられる唇。息遣いを間近に感じ、咲耶は初めて、ハクコが自分にしている行為を理解する。
(キ、キスされてるっ……!)
あまりのことに、身体が硬直してしまう。官能的なくちづけというよりは、咲耶に触れることを楽しんでいるような感じだ。
そうされている自分と、そうしているハクコを実感して、熱病に浮かされてるような心地になる。
「……咲耶……?」
ささやかれる呼びかけに、目を開ける。身体のあちこちに変に力が入りすぎて、脱力感に襲われた。
力の抜けた咲耶を支えるようにハクコの腕が伸びて、そのまま布団に横たえられる。
「眠いのか? 遅くまで付き合わせて、すまない」
「…………いや、あの……いま私に──」
なんとか理性を取り戻し問いかけた咲耶の髪を、ハクコの手のひらがなでた。
「いまの、人の姿に“化身”したあなたも、“神獣”である白い虎のあなたも、どちらも同じ存在でしょ? だから……私は、どっちのあなたも……好き、だわ」
口にするのは照れくさかったが、ハクコの誤解をとくには、きちんと伝えるべきだろう。
そう思う咲耶に対し、ハクコは自らの手にある咲耶の手指を引き寄せ、胸もとへと導いた。もう一方の手を、重ねる。
「獣の私も、ヒトの私も、どちらも私であることには変わりない。お前のいう通り、それが真理なのだ。だから、お前に【どちらの私】も気に入ってもらえたのなら……嬉しい」
ハクコは、最後のひとことをかみしめるように言った。咲耶の手を包むハクコの手に、やんわりとした力がこめられる。
「師の……言った通りだ。お前といると私は、今までに抱いたことのない心持ちになる」
向けられる微笑みは、無防備だった咲耶の心をたやすくさらった。めったに見せることのない、やわらかな表情。
「お前は人の形をした器のような私のなかに、優しい彩りを注いでくれる……」
静かに響く低い声音が頬に触れたかと思うと、次いで唇にぬくもりを感じていた。
確かめるように触れて、かすめとられる唇。息遣いを間近に感じ、咲耶は初めて、ハクコが自分にしている行為を理解する。
(キ、キスされてるっ……!)
あまりのことに、身体が硬直してしまう。官能的なくちづけというよりは、咲耶に触れることを楽しんでいるような感じだ。
そうされている自分と、そうしているハクコを実感して、熱病に浮かされてるような心地になる。
「……咲耶……?」
ささやかれる呼びかけに、目を開ける。身体のあちこちに変に力が入りすぎて、脱力感に襲われた。
力の抜けた咲耶を支えるようにハクコの腕が伸びて、そのまま布団に横たえられる。
「眠いのか? 遅くまで付き合わせて、すまない」
「…………いや、あの……いま私に──」
なんとか理性を取り戻し問いかけた咲耶の髪を、ハクコの手のひらがなでた。