神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
《六》月下神現・序
白い鳥居の両脇にある、一対の石像。
本来なら狛犬が置かれるだろう場所には、唐獅子の像ではなく、虎を思わせる造りのものがあった。
その下にいた衛士らしき男たちに見とがめられた咲耶だったが、松明により照らされた着衣を確認され、すぐに“神官”を名乗る男に“大神社”内へと案内されることとなった。
(椿ちゃんのいうこと聞いといて良かった~っ)
無精ひげの武骨な男らに囲まれた時は、思わず咲耶も身の危険を感じ、地中に“隠形”している犬朗を呼び戻そうとしたくらいだ。
しかし、白地に金刺しゅうの入った水干と、黒地に金刺しゅうの入った筒袴という格好の咲耶に、男たちの態度が一変したのだった。
椿いわく、
「姫さま。お出かけになるのでしたら、こちらの正式な衣をまとってくださいませ。
この“下総ノ国”で、白・黒・金の三色を同時にまとうことは、姫さまとハク様にだけ許された“禁色”ですから。不埒な輩にも、これだけで通じる……身の上の証となるかと」
本来なら狛犬が置かれるだろう場所には、唐獅子の像ではなく、虎を思わせる造りのものがあった。
その下にいた衛士らしき男たちに見とがめられた咲耶だったが、松明により照らされた着衣を確認され、すぐに“神官”を名乗る男に“大神社”内へと案内されることとなった。
(椿ちゃんのいうこと聞いといて良かった~っ)
無精ひげの武骨な男らに囲まれた時は、思わず咲耶も身の危険を感じ、地中に“隠形”している犬朗を呼び戻そうとしたくらいだ。
しかし、白地に金刺しゅうの入った水干と、黒地に金刺しゅうの入った筒袴という格好の咲耶に、男たちの態度が一変したのだった。
椿いわく、
「姫さま。お出かけになるのでしたら、こちらの正式な衣をまとってくださいませ。
この“下総ノ国”で、白・黒・金の三色を同時にまとうことは、姫さまとハク様にだけ許された“禁色”ですから。不埒な輩にも、これだけで通じる……身の上の証となるかと」