神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
「しかし、あなたも酔狂な方ですな。“神現しの宴”に参加したいとは。
……いや、異界から喚び寄せた女性では、我らと感覚が違うのやも……」
「はい? それって、どういう意味ですか?」
ぶつぶつとつぶやき始めた男に咲耶は眉を寄せ、訊き返した。
「なに、こちらのこと。
──では、少し急ぎましょうぞ。『主役』のお出ましに、間に合わなくなりますからな」
意味深な物言いを繰り返す“神官”の態度を不審に思いはしたが、それ以上は追及せずにあとに続いた。
ややしてたどり着いた大きな白い鳥居を抜けると、そこが“大神社”の本殿のようだった。
開放された回廊の内側にあるのは舞殿だろうか。
正方形の台の上に今は舞い手はいないが、取り囲むような回廊には、盃を手にした、直衣姿や狩衣姿の貴族風な男たちが談笑していた。
椿の言う通り、咲耶の予想していた『宴』よりはやや上品な、あくまでも静かに酒を酌み交わすといった光景であった。