アシンメトリー
早朝から集められた場所で私は、あくびを繰り返す。

昨日の夜、結局、全然眠れずに私が眠りに落ちたのは明け方の3時だった。

起床は6時。

そんな眠そうな目をして、ボーっとしている私に横の列に並んでいた友達が近づいてきてヒソヒソ声で喋りかけてきた。

「眠そうやけど、大丈夫?」

「大丈夫やない。なんか昨日全然寝れへんかってさ。」

「まぢで、まさかのホームシックなん?」

友達が口を押さえて、笑いを堪えてる。

「違うわ!」

つい感情が高ぶって、大きい声を出してしまい、近くにいた先生にギロリと睨まれる。

私は友達の横に少し近づくと、小さな声で言った。

「ってかさ、例えばやけど、嫌いな人の事をさ、見てもうたり、考えたりその人に見られたら目逸らしたりする?」

「えっ?嫌いな人?そんなん見んくない?まず、そんな人の事考えるのも鬱陶しいやん。視界にも入れたくないやろ。」

「そうやんな…」

私はがっくりと肩を落とし、ため息をついた。

そして、クラスの列の一番前で仁王立ちして、生徒を殺気立った目で見張っているあの人に目をやる。

この感情は嘘だよね?って空の上で見てる神様に質問したい気分だった。

私の好きになる人は、かっこよくてスマートに何でもこなせる王子様みたいな人だと信じていた。

少女漫画みたいに出会って、一緒に帰ったり同じ席の隣で楽しく笑って好きだって気付いて、ドキドキしたりして。

そんな夢みたいなものが好きだと言う感情だって思いたかった。

でも…私はあの人を見て、またため息をつく。

初めて痛いくらいに高鳴った胸、眠れないくらいうるさくて、その原因は恋で好きだって認めるしかなかった。

だって、私の視線はいつもあの人を追いかける。

ただ何をするって訳でもないけれど、神様は私の恋する相手はあの人だって、私にそう知らせた。

子供だった私の王子様は、私の理想とは大きくかけ離れたあの人だった。
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