アシンメトリー
現実は、胸を張って好きなんて言葉を私は簡単に誰かに口には出すことなんて出来なかった。
「ほんま、なんでもないから…」
胸の中の悩みを隠したまま私は引きつった笑顔で、心配する友達を通り越していた。
午後の授業中、椅子に座っている時ずっとフラッシュバックみたいにさっきの出来事が何度も私の頭を悩ませた。
馬鹿みたいだ。
そう思う度に、今の自分が惨めに思えた。
自分だけが悲しんで、苦しんでいる。
独りよがりだってわかっていた。
あの人が私のそんな気持ちなんて気づくはずもない。
そんな当たり前の事解っている。
「篠崎さん。」
そう私を呼んだ声で、思考回路はショートして、現実に引き戻される。
すると、顔をあげてそこにいたのは、あの人だった。
夢?の中にいるかと思い、私はあまりの突然の予想していなかった不意打ちの出来事に耳まで真っ赤にして、何も言えずに黙ってしまった。
「授業中や!何ボーっとしとるんや!」
私は、その言葉に不思議そうな顔をして、あの人の後ろにあった時計を確認すると、あれからもう2時間も経っていた事を知る。
とっくに前の授業は終わっていたのだ。
そして、いつの間にか、あの人の授業になっていた。
「すみません…」
そう言って、顔を下に向けた私を睨みつけた後、あの人は、教科書を読みながら授業に戻った。
予鈴がなり、授業が終わると、教室を出て行こうとするあの人。
すると、それと同時に私の前の席に座っていた友達が私の手を掴み、あの人に近づいていき呼びとめた。
「矢田先生!」
友達がそう言うと、あの人が眉間にシワを寄せた顔で振り向いた。
「なんや?」
「授業でわからないところあるんで、放課後教えてもらってもいいですか?」
「今日やったら、別にええけど。ほんなら、ホームルーム終わったら、職員室こい。」
そういうと、友達をジロっと見ると、あの人は早足で帰っていく。
私は友達がした突然の行動に、びっくりしてしばらく放心状態だった。
「かおる、あんたが悩んでるんってこの事なんやろ?」
そう言った友達の握っていた手を力一杯振りはらった。
そして、不機嫌そうな顔で何も言わずに自分の席に戻っていく。
私を追いかけるように友達も席に座ると、後ろを振り向いていった。
「かおる、あんた、ほんまは矢田先生が好きなんやろ?さっきないとったんも…」
友達が次の話そうとした言葉を遮る様に私は言った。
「余計な事せんといてよ!どうせ、私なんかが好きやいうんも迷惑なんやから。」
そう言って、机に顔を伏せて友達のそれ以上の言葉を遮った。
私は恐くてたまらなかったんだろう。
拒絶される事も自分が傷つく事も。
そして、何より可愛い子のように私には自分の容姿にも成長期で太った身体にも全てに自信がなかったのだ。
そんなわかりきった現実に答えは出ていたからだ。
放課後、嫌がる私の手を引っ張って、友達が職員室までやってきた。
「矢田先生。」
ドアからそう呼んだ友達の影に隠れて私はあの人がやってくる靴音を聞いた。
「第二理科室、今空いとるから、そこ行こか。」
そう友達に言ったあの人は、私には視線さえも合わせなかった。
でも、友達は掴んだ手を離さず、結局、私も一緒に第二理科室まできてしまったのだ。
鍵を開けて、あの人が机の上に上がった椅子を下ろしていると、「はよ入れよ。」と言って、こっちに視線を向ける。
友達がぐいっと私の腕を引っ張るが、私はそれを力任せに離した。
「かおる?仲良くなれるチャンスやん。協力したるから、はよいこ。」
そう耳元で友達が私に呟いた瞬間、あの人がドアのところに立って、不思議そうにこっちをみていた。
「何グズグズしてんねん。早よ入れ。」
私はあの人の顔を見た瞬間、急に恥ずかしくなり、友達に笑顔で言った。
「私、やっぱり先帰るから。矢田先生に2人きりで教えてもらいや。」
「え!ちょっと、かおるも一緒に教えてもらうんやろ!」
「ええ言うてんやから、ごちゃごちゃ言わずにはよ入れ。教えたるから。」
そう言って、友達は腕を掴まれて、第二理科室に連れられていく。
私は一旦帰るフリをして、戻ってドアのガラス越しに2人の姿を確認していた。
あの人が横に座り、近い距離で笑いながら話す2人を見て、私は溜息をついた。
私は傷ついていた。
自分が逃げだしたから、こうなったのに、友達とあの人に嫉妬していたのだ。
そして、初めて一人で帰る通学路で私は思った。
もうあの人には二度と近づきたくないと。
「ほんま、なんでもないから…」
胸の中の悩みを隠したまま私は引きつった笑顔で、心配する友達を通り越していた。
午後の授業中、椅子に座っている時ずっとフラッシュバックみたいにさっきの出来事が何度も私の頭を悩ませた。
馬鹿みたいだ。
そう思う度に、今の自分が惨めに思えた。
自分だけが悲しんで、苦しんでいる。
独りよがりだってわかっていた。
あの人が私のそんな気持ちなんて気づくはずもない。
そんな当たり前の事解っている。
「篠崎さん。」
そう私を呼んだ声で、思考回路はショートして、現実に引き戻される。
すると、顔をあげてそこにいたのは、あの人だった。
夢?の中にいるかと思い、私はあまりの突然の予想していなかった不意打ちの出来事に耳まで真っ赤にして、何も言えずに黙ってしまった。
「授業中や!何ボーっとしとるんや!」
私は、その言葉に不思議そうな顔をして、あの人の後ろにあった時計を確認すると、あれからもう2時間も経っていた事を知る。
とっくに前の授業は終わっていたのだ。
そして、いつの間にか、あの人の授業になっていた。
「すみません…」
そう言って、顔を下に向けた私を睨みつけた後、あの人は、教科書を読みながら授業に戻った。
予鈴がなり、授業が終わると、教室を出て行こうとするあの人。
すると、それと同時に私の前の席に座っていた友達が私の手を掴み、あの人に近づいていき呼びとめた。
「矢田先生!」
友達がそう言うと、あの人が眉間にシワを寄せた顔で振り向いた。
「なんや?」
「授業でわからないところあるんで、放課後教えてもらってもいいですか?」
「今日やったら、別にええけど。ほんなら、ホームルーム終わったら、職員室こい。」
そういうと、友達をジロっと見ると、あの人は早足で帰っていく。
私は友達がした突然の行動に、びっくりしてしばらく放心状態だった。
「かおる、あんたが悩んでるんってこの事なんやろ?」
そう言った友達の握っていた手を力一杯振りはらった。
そして、不機嫌そうな顔で何も言わずに自分の席に戻っていく。
私を追いかけるように友達も席に座ると、後ろを振り向いていった。
「かおる、あんた、ほんまは矢田先生が好きなんやろ?さっきないとったんも…」
友達が次の話そうとした言葉を遮る様に私は言った。
「余計な事せんといてよ!どうせ、私なんかが好きやいうんも迷惑なんやから。」
そう言って、机に顔を伏せて友達のそれ以上の言葉を遮った。
私は恐くてたまらなかったんだろう。
拒絶される事も自分が傷つく事も。
そして、何より可愛い子のように私には自分の容姿にも成長期で太った身体にも全てに自信がなかったのだ。
そんなわかりきった現実に答えは出ていたからだ。
放課後、嫌がる私の手を引っ張って、友達が職員室までやってきた。
「矢田先生。」
ドアからそう呼んだ友達の影に隠れて私はあの人がやってくる靴音を聞いた。
「第二理科室、今空いとるから、そこ行こか。」
そう友達に言ったあの人は、私には視線さえも合わせなかった。
でも、友達は掴んだ手を離さず、結局、私も一緒に第二理科室まできてしまったのだ。
鍵を開けて、あの人が机の上に上がった椅子を下ろしていると、「はよ入れよ。」と言って、こっちに視線を向ける。
友達がぐいっと私の腕を引っ張るが、私はそれを力任せに離した。
「かおる?仲良くなれるチャンスやん。協力したるから、はよいこ。」
そう耳元で友達が私に呟いた瞬間、あの人がドアのところに立って、不思議そうにこっちをみていた。
「何グズグズしてんねん。早よ入れ。」
私はあの人の顔を見た瞬間、急に恥ずかしくなり、友達に笑顔で言った。
「私、やっぱり先帰るから。矢田先生に2人きりで教えてもらいや。」
「え!ちょっと、かおるも一緒に教えてもらうんやろ!」
「ええ言うてんやから、ごちゃごちゃ言わずにはよ入れ。教えたるから。」
そう言って、友達は腕を掴まれて、第二理科室に連れられていく。
私は一旦帰るフリをして、戻ってドアのガラス越しに2人の姿を確認していた。
あの人が横に座り、近い距離で笑いながら話す2人を見て、私は溜息をついた。
私は傷ついていた。
自分が逃げだしたから、こうなったのに、友達とあの人に嫉妬していたのだ。
そして、初めて一人で帰る通学路で私は思った。
もうあの人には二度と近づきたくないと。