彼氏の上手なつくりか譚
「急に通話してくるから、何事かと思ったけど、なるほど。読書感想文ねえー」
「そうなの。私、本は読むんだけど、恋愛小説ばっかりでさー。読書感想文を書くとなると、同じ恋愛小説でも、純文学の方がいいでしょ? 下村くん、私以上に文学詳しそうだから、おすすめの本とか教えてくれるかなって」
「なるほどね。でも、僕は海外文学ばかりで、日本文学はあんまり読んでないよ?」
「少ないけど、読んではいる、と」
「まあね。芥川とか川端とか谷崎とか、有名どころばかりだけど……」
電話口の向こうで、下村くんの「うーん」と唸っている声が聞こえる。
それにしても、下村くんの声。電話だと高くて、美男子ようなカッコよさがあって、落ち着く。
俗にいう、「イケボ」ってやつだ。それも、声フェチの私にとって、ベストな声だ。
録音して、アラーム音にしたいくらい。