彼氏の上手なつくりか譚
「あ、これなんかどうかな?」
下村くんが1冊の本を手に取った。
「ヤマ……何?」
「『山椒魚』。井伏鱒二」
「山椒魚って、あのサンショウウオのこと?」
「そう。山椒魚の悲しい物語ってとこかな。短編だから今日中に読める」
「悲しいって悲劇なの?」
「ある意味ね……あ、これもいいよ!」
下村くんがまた別の1冊を手に取った。
「安部公房の『壁』。芥川賞を受賞した作品で、読書感想文向きだと思う」
「壁」ってタイトル……なんか難しそう。
人生には壁がつきものだから、どーのこーのとか、そんなことを書かなきゃいけないんだろうか……読んでないからわからないけど。