彼氏の上手なつくりか譚





私は、太宰の『女生徒』を、下村くんは下村くんで、3冊の本を買って、本屋を後にした。


目的は果たした。でも、このまま帰ってもいいものなのか、わからない。


時間は15:00過ぎ。家にはゆっくり帰っても16:00には着くだろう。


「あの……」と下村くんが口を開いた。


「どこか入る? カフェとか」


まあ、せっかくだしお茶でも……と思ったけど、いやいや、どうなんだろう。


これってデートにならないだろうか?


一緒に本屋はまだちゃんとした目的があったからいい。でも、カフェに入るのはちゃんとした目的があるわけじゃない。


強いてあるとすれば、時間潰しだ。




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