彼氏の上手なつくりか譚





こういう状況に陥った時、私は無理に勇気を出さない。


勇気を出さなくてもいい世界に、幸運にも私は生まれてきたのだ。


一人じゃない世界。誰かに寄りかかってできる「人」。


私は「人」なんだ。


『実は、あの一件で、中越くんとまだ気まずいんだよね……』


真奈はすぐに返信してくれた。


『なら、中越くんのLINE、教えてくれない?』


『え? 真奈知らないの? 真奈が中越くんのLINE、私に教えてくれたんだよ?』


『機種変したら消えた』


まあ、いい。


『ありがとう』


余計な詮索はせず、そう返信した。


やっぱり真奈は頼りになる。


そう思いながら、以前真奈から教えてもらった、中越くんのLINEを送ろうとした時、真奈からまたLINEが来た。


『ちゃんと中越くんの許可はとってね?』


まあ、他人に連絡先を教える、最低限のルールだ。


気まずいけど、キャンプに誘うことを考えたら、いくらか気まずさは薄れる。




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