彼氏の上手なつくりか譚





中越くんに許可をもらうため、中越くんとのLINEのトーク画面を開いた。


思えばあの頃、ほとんど毎日連絡を取り合っていたんだなあと、過去のメッセージのやり取りを振り返って、懐かしくなった。


それと同時に、画面右側の吹き出しの中で話している人が一体誰なんだろうと思った。


私だ。私が送った文章。でもなんだか私じゃないような気がした。


私ってこんなに(笑)えてたっけ? 私ってこんなに「!(びっくり)」してたっけ? 私ってこんなに饒舌だったっけ?


同じように、中越くんもこんなに(笑)っていないんじゃないか。こんなに「!(びっくり)」してないんじゃないか。そもそもこんなに饒舌じゃないんじゃないかと思った。


私は異性と上手く話せない地味子。


中越くんは寡黙な野球少年。


まるで、登場人物は同じでも、全く違う物語のようだ。




< 180 / 525 >

この作品をシェア

pagetop