彼氏の上手なつくりか譚





「あ、でも、本館には売店とかあるかもね」


と真奈が言って、玄関に向かったから私は慌てて引き留めた。


「私、行くよ」


「そう? じゃあお願いね。お金は後で払うから」


と返され、「私」の後に「も」をつけ忘れていたことに気づいた。


たった1文字つけ忘れただけで、人はいとも簡単に孤独になるんだなあ。


そんなことを思いながら、ビーチサンダルをパタパタ鳴らしながら山道を降りた。


自然に囲まれているからかな、孤独なはずなのに、ただの一人になる。


イヤホンをしないで、一人で歩くのって、そういえば久しぶりだ。


静かな場所なのに、耳をすませばちゃんと音がある。




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