彼氏の上手なつくりか譚
ロッジに戻ると、誰もおらず、
「川にいます。 川上」
という真奈の書き置きが残されていた。
こんな短い文章の中に「川」が6本も流れている。
「トイレに下村いないみたいだけど、下村の奴、大丈夫なのか?」
木刀を持った中越くんも書き置きに気づいた。
「どうなんでしょう」
そんなことよりも、私は彼の買った木刀の方が気になっていた。
「それ、どうするんですか?」
「いや、使い道……あると思って……く、クマとかイノシシ出たときとか」
顔を真っ赤にしてそう答えた中越くんだけど、木刀さえあれば、彼はクマやイノシシに勝てるとでも思っているのだろうか。