彼氏の上手なつくりか譚
「あ、おーい!」
真奈が手を振って、駆け寄ってきた。ビキニ姿、女の象徴を揺らして。
「なんで飯盒炊飯?」
「いや、それよりもなんでこんなところでビキニなの?」
「私、水着ってこれしかもってないから」
出た出た。男受けを狙ってのことなのに、それを言えない代わりの言い訳。
「で、上川くんはなんでバタフライ?」
「さあ」
「普通、こういうところで泳ぐ時って、平泳ぎとかクロールとか、100歩譲って背泳ぎなんじゃないの?」
「まあ、彼普通じゃないし」
「下村くん、体調悪いならロッジで休んでたら? 私、付き添うよ?」
「いい」と下村くんがジェスチャーを送ってきた。
どうやら、吐き気がひどすぎて、喋ることもできないらしい。
中越くんは木刀でバットの素振りを始めた。
「で、中越くんはなんで木刀なんか持ってるわけ?」
今度は真奈がつっこんできた。
「買ってた。なんか、クマとかイノシシとかと戦うためらしいよ」
「この辺、出てもサルくらいなんだけど」
「え? サル出るの?」
「らしいよ。注意書きにエサを与えないでくださいって書いてあった」
そういえば、野生のサルって見たことない。