彼氏の上手なつくりか譚





中越くんは基本、無表情だ。


いや、むしろ怒っているように見える。


だからこうして話していると、いつもLINEしている相手が、あの夜、通話した相手が本当に中越くんなのか、わからなくなることがよくある。


「あ」と中越くんが声を上げた。


振り向くと、中越くんの目線の先にカニがいた。


「カニですね」


「これ、食えるのか?」


「うーん、どうなんでしょうか?」


「だから、聞いたんだが」


「あ、そうでしたね。すみません」


「山田さん」


「なんでしょう?」


「どうして謝るんだ?」




< 211 / 525 >

この作品をシェア

pagetop