彼氏の上手なつくりか譚
中越くんは基本、無表情だ。
いや、むしろ怒っているように見える。
だからこうして話していると、いつもLINEしている相手が、あの夜、通話した相手が本当に中越くんなのか、わからなくなることがよくある。
「あ」と中越くんが声を上げた。
振り向くと、中越くんの目線の先にカニがいた。
「カニですね」
「これ、食えるのか?」
「うーん、どうなんでしょうか?」
「だから、聞いたんだが」
「あ、そうでしたね。すみません」
「山田さん」
「なんでしょう?」
「どうして謝るんだ?」