彼氏の上手なつくりか譚
私たちにはもう来年の夏はない。
それぞれの生活、それぞれの夏が待っている。
「あ、ご飯!」
私は気づいて、飯盒容器に余った木の枝を当てた。
まるで、アブラゼミのようなジージーという、命の源を感じた。
「炊けたかな……」
軍手をはめて、火から飯盒容器を上げた。
そして、さっきのイワナの時のように、みんなが覗き込む中、蓋を開けると、湯気の次にお米のいい香り、そして、白くつやつやしたご飯が現れた。
「お、成功だな」
中越くんが言って、「だよね? だよね?」と真奈と上川くんにも確認をとった。
「うん、炊けてるな。山田さん、やるじゃん!」
「理沙、あんたいいお嫁さんになるよ!」