彼氏の上手なつくりか譚
真奈に向いてそうな職業かあ……。
スタイルがいいから、モデルかな? おしゃれだから、アパレル関係かな? 頭がいいから弁護士かな?
「わからないのよ」真奈が私の思考を遮った。
「人が将来、どんな仕事に就くかなんてね。でも、彼氏ができて、その人と結婚する気でいるなら、彼氏の将来の可能性についても考えなきゃいけないの」
「彼氏の将来の可能性?」
「そう。結婚を考える時、相手の収入のことも考えなきゃ。フリーターだったらどうするの? あんたが養う? じゃあ子供ができたら? 産休とれない会社だったら? その間のお金は? 育児しながら仕事する自信はある? 食費や家賃や車の維持費の他に、養育費とか、保険料とか、奨学金の返済とかまで手が回るの?」
「そ、そんないっぺんに言われても……」
「って言うけど、結婚ってそういうものなのよ。だから、余計なことは考えず、まずは、とりあえず恋愛してみるの。とりあえず、付き合ってみて、失敗して、失敗に失敗を重ねて、その積み重ねが経験値になって、レベルが上がって、成長が成功に繋がる。これが彼氏の上手な作り方なのよ」
「そうなのかな……」
恋愛小説とは違って、夢も希望もない。
でも、現実はそうなんだろうと思ってしまう。
なら私は、何のために恋愛小説ばかり読んでいたのか、わからなくなる。
私の憧れは、夢物語なのかもしれない。
幼稚園の時に夢見た、ヒーローになりたいとか、お姫様になりたいとか、そういう類と同じ夢物語……。