彼氏の上手なつくりか譚
「なんだよ。結局ついてきたのかよ」
上川くんが口を尖らせて言った。
「何よ! 私たちが来ちゃ困ることでもあるわけ?」
「別に。ただ、大人しくしてろよな。逃げるから」
上川くんに大人しくなんて言われる。
そんな屈辱を味わう日が来るなんて、心外だな……。
「カブトムシってどこにいるもんなんですか?」
「樹液のある木にいるんだよ。ほら、ちょうどあの木みたいに」
中越くんが懐中電灯を照らした木には、蜜のようなものが垂れていて、その周りには蛾やハチが群がっていた。
……気持ち悪っ!
「どうだ? 上川」
「うーん、外れだな。カナブンならいるけど」
「カナブン?」真奈が急に後退った。
「カナブンって臭い奴?」
「「それはカメムシ」」
上川くんの中越くんがハモった。