彼氏の上手なつくりか譚
それから20分ほど探すも、なかなかカブトムシは見つからない。
さすがに飽きてきたのか、真奈は私の隣で、
「ねえ、虫よけスプレー取りに帰らない?」
「ねえ、売店でアイス買って帰らない?」
「ねえ、ロッジに帰ってトランプしない?」
と、帰りたくなる誘惑をしてくるようになった。
上川くんと中越くんは躍起になり、真奈は帰りたがっている。
下村くんはというと、ただ黙って歩くだけ。
「下村くん、カブトムシ、いると思う?」
気が付くと、私は気まずさも忘れて下村くんに話しかけていた。
話しかけられた下村くんの方も動揺したのか、一瞬ビクッとなり、それから私の耳元で小さく言った。
「ぶっちゃけ、いないと思う」
「わかるの?」
「この辺、サルが出るって言ってたでしょ? サルって昆虫食べるから」
うげっ! 気持ち悪っ!