彼氏の上手なつくりか譚





下村くんのその一言が、私には痛いほどわかる。


私もそうだったから、わかる。


「そういえば、下村くん。太宰の『女生徒』あんまり好きじゃなかったよね? どうしてさっき私に感想なんか聞いたの?」


「あ、いや……」


下村くんのその反応で、ふと我に返った。


さっき……ああ、そうだ。


私、今普通に話してた下村くんから告白を受けたんだった。


「実を言うと、昨日徹夜で太宰の『女生徒』を読み返していたんだ」


「え? まさかそれで……」




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