彼氏の上手なつくりか譚
スマホは諦めて、ベランダに出てみた。
まだバーベキューの匂いが残るベランダは、風が心地よく吹いていて、木々のざわめきが月光の下、優しく聞こえる。
この音を聞いているだけで、何だか心が軽くなって、癒されていく。
今ここに紙とペンがあれば、高尚な文章が書けそうだ。
それこそ純文学みたいに、〇〇性とか、〇〇論とかみたいに、難しい言葉を使った文章が。
小説家になるのもいいかなって思う。そうすれば、下村くんと同じ夢を持って、一緒になって頑張れるような気がする。
でも、逆に支える側になるのもいいかなって思う。
そうだ、カフェでも開こう。
私がカフェでコーヒーを淹れ、下村くんはカウンターの隅で執筆活動に勤しむ。
コーヒーの香り、ジャズの音、目の前には愛している人、愛してくれる人……。
そんな毎日だと幸せだろうなと思う。
でも、真奈は言った。
今回できた彼氏とは結婚までいかない、と。