彼氏の上手なつくりか譚





「明日って何するんだっけ?」


上川くんに聞かれて、私は「魚釣りとかじゃなかったっけ?」と適当に答えた。


「魚釣りってオレ、あんまり好きじゃねーんだよね」


「でも、今日……じゃなくて、昨日は楽しそうにしてたじゃん」


指摘すると、上川くんは少し考えて、


「いや、一匹しか釣れなかったし」


「でも、一匹釣れただけでもよかったじゃん」


「その代わりに地球5回釣ったけどな」


ニカッと笑う上川くん。その横顔は、やっぱりカッコイイ。


バカじゃなかったらいいのにと思う。バカじゃなかったらもっとモテるのに。


イケメンの無駄遣い、乙。


「勇気の出し方の件だけどさあ」不意に言われて、私は開きかけていた心の余裕という名の扉を勢いよく閉めた。


「教えるって言ったけど、ごめん。やっぱ無理だ。オレには」


上川くんは「オレには」という言葉を付け足した。


その言葉が一体何を意味するのか、気になって、「上川くんは?」と聞いた。




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