彼氏の上手なつくりか譚





歯を磨き終えた下村くんが、テーブルの上のタマゴサンドを手に取ったのを見て、私は驚いた。


「あれ? 歯磨いたのに、食べるの?」


そう聞くと、下村くんじゃなくて、真奈が「え?」と声を出した。


「普通じゃない? ねえ、下村くん」


「うん。僕も歯は起きてすぐ磨くものだと思ってた」


「いや、それはないだろ」と上川くんが割り込んできた。


「だってそれって、朝食の味を口に残しながら登校するってことだろ?」


「私もそう思う。それって、スッキリしないし、気持ち悪くない?」


「いやいやいや!」と真奈が声を張った。


「寝てる間に溜まった歯垢まみれの口で、ご飯食べる方が気持ち悪いって!」


「僕もそう思う」


「いいや。ってことはなんだ? 歯磨き粉の清涼感満載の口で朝食食うわけ?」


「そうだよね。なんかチョコミント食べてるみたいで、なんか気持ち悪い」




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