彼氏の上手なつくりか譚
「せっかく川があるんだし、理沙も少し泳いだら?」
そう真奈に促され、私は濡れてもいいTシャツとショートパンツ、ビーチサンダルを履いて、男子たちに遅れて川に降りた。
川の水に、ビーチサンダルで足を付けてみた。
川の水は夏なのに、まるで冬の水道水みたいに冷たい。きっと海水よりも冷たいんじゃないかと思う。
こんなに冷たいのに、上川くんはやっぱりバタフライで泳いでいて、飛び散った水しぶきが顔にかかって、私の視界をぼやけさせた。
「こら! 大人しく泳げ!」
川岸から真奈が怒鳴るも水中にいる上川くんの耳には届かない。
「聞いてんのか、バカー!」
終いには、川原の石を投げ始めたから、私は「さすがにそれは……」と慌てて止めた。
「まったく、なんでバタフライなのよ!」
「まあ、でも、上手じゃない?」
私は精一杯のフォローをした。
「上手に泳げるからって何なのよ。下手でも泳げれば人助けには十分じゃない!」
フォローのつもりが、真奈の怒りのエネルギーになってしまった。
まずい。これじゃ、真奈は上川くんのことをますます嫌いになる。