彼氏の上手なつくりか譚
「まずは、上川くんなりに真奈の気を引くと思うことをやってみて」
昨夜、私は上川くんにそう言った。確かに言った。
でも、それをどう勘違いしたのか、上川くんは明らかに真奈を意識しながら、一生懸命バタフライを泳いでいる。
その証拠に、真奈の前をバタフライで行ったり来たり、かれこれ10往復はしている。
「ちょっと上川くん!」
私は泳いでいる上川くんの頭目がけて小石を投げた。
「痛っ! 何すんだよ!」
「こっちのセリフだよ! どういう風に私の話を聞いたらこうなるわけ? わかるようにちゃんと説明してよ!」
「なんだ、そんなことか」上川くんがゴーグルを外して言った。
「頑張る男ってカッコイイじゃん? だから、頑張ってみました」