彼氏の上手なつくりか譚
つけ麺屋は駅前にある。
そのお店は、麺の量とつけ汁の辛さを1辛~15辛と20辛が選べて、安い。
学生やサラリーマンに人気で、例えば2玉で20辛を注文すると、450円。ワンコインで満腹食べられるのだ。
「理沙ちゃん、何辛?」
カウンターに隣り合って座って、2玉15辛を注文した上川くんが聞いた。
「私は1玉で20辛かな」
「20? 20ってだいぶ辛いよ? 大丈夫?」
「うん。私、いつもこれだから」
「へえー、すごいな。オレも前に20辛挑戦したことあるけど、唇腫れたし」
何を言っているんだ、上川くん。それがいいんじゃないか。
汗かきながら、ヒーヒー食べるのが辛いものを食べる楽しみなのであって、中途半端に辛いだけのものは、辛いものを楽しむという意味では、楽しみが半減する。