彼氏の上手なつくりか譚





「でも、いつかまた犬飼おうかなって思ってるよ。大人になって、結婚して」


「犬のいる生活かあ。いいよな。仕事から疲れて帰ってきたときに、お出迎えしてくれるのとか、憧れなんだよなあ」


「上川くんはペット飼ってないの?」


「うちのマンション、ペット飼えないんだ」そう言って、上川くんはガラスの向こうにいる、ミニチュアシュナウザーに手をかざした。


「だからここで我慢。なんかつらいこととかあった時とかはいつもここに来る。なんか動物見てると癒されるんだよな」


「うん、わかる」


ミニチュアシュナウザーは私たちを見ると、飛び跳ねて、何だか「私を見て! こんなにジャンプできるのよ! すごいでしょ!」と自慢しているように見えた。


「私も時々、ここに来ていいかな?」


「もちろん。あ、でも、この場所は内緒な? まだ誰にも言ってないんだから。オレと理沙ちゃんだけの秘密だ」


「うん、わかった。絶対誰にも言わない」


そう約束したけど、きっと上川くんが真奈と付き合ったら、二人だけの秘密じゃなくなるんだ。




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