彼氏の上手なつくりか譚
ペットショップを出て、本館に戻る途中、おどろおどろしいブースが立っていて、見るとお化け屋敷だった。
中から女の人の悲鳴が聞こえてきて、私は身震いがして、思わず傍にあった上川くんの服の袖を指で掴んだ。
「え? 何? 理沙ちゃん、こういうの苦手なの?」
まずい。嫌な奴に弱点がバレてしまった。
「そ、そんなことないよ? ちょっとびっくりしただけ」
「ふーん、そっか」
すると、上川くんはスマホを開いて、「よし、まだ時間あるな」と言った。
「入ろっか」
「やだよ!」
「なんで? 平気なんだろ?」
強がっただけだってなぜわからない!
いや、わかっている。こいつ、わかっているんだ。わかっているから、こんなにニヤケ顔なんだ。バカだからじゃない。私をバカにしてるからニヤケ顔なんだ。
「ほ、ほら、私、1回帰って浴衣着ないと……」
「オレ、浴衣とか詳しくないけど、あれって着るのに4時間もかかるもんなの?」
「あ、いや……」
返す言葉が見つからない。でも、見つけなきゃ死ぬ。
「よし、じゃあ決まり!」