彼氏の上手なつくりか譚
あー、泣いた泣いた。
ショッピングモールの中にあるお化け屋敷なんか、たかが知れてるだろうと言い聞かせて入ったけど、とんでもなかった。
終始、上川くんの腕を掴んで、何か出たら悲鳴を上げ、その場にしゃがみ込む。
それを見て、上川くんはふざけて私を置いていこうと意地悪するもんだから、余計に怖かった。
「だからって、何も泣くことはないだろ?」
上川くんは私の頭を優しく撫でながら、私の泣き顔を覗き込み、吹き出した。
こいつ、ホント最低だ。
「ほら、もう泣き止めよ。頑張ったご褒美に、そこの駄菓子屋で100円までなら、お菓子買ってやるからさ」
「子供じゃない!」
上川くんの厚い胸板を、力の入らない拳で何度も叩いた。
上川くんは変顔で「痛くありませーん」とバカにしてきて、それが余計にムカついて、あ、誰かに似てると思った。