彼氏の上手なつくりか譚
「上川くん、あれやらない?」
リラックスさせるつもりで、傍にあった金魚すくいの屋台を指さした。
「金魚すくい? そんなことしてる場合じゃないだろ! まずはみんなと合流すること。それを最優先させないと」
「でも、緊張しすぎなのはよくないと思うよ?」
「緊張? ふん、してねーよ。PK蹴る前の方がよっぽど緊張すらあ」
「でも、右手と右足一緒に出てるけど……」
「こ、これか? バ、バカだなあ、知らねーの? これ、今年の流行りなんだぜ?」
そんなわけがない。人類が誕生してから一度も流行っていないだろうし、この先、どんな未来が来ても流行ることはない。絶対。
「だから、とりあえず金魚すくいでもして落ち着いたら?」
「水でも飲んでみたいなノリで言うんじゃねーよ。それとも飲めってか? 金魚飲めってか?」
まあ、コーヒーよりは効果はないだろうけど、手のひらに書いた人を3人飲むよりは効きそうな気がする。
「とにかく、オレは大丈夫だから、さっさと行こうぜ!」
「……上川くん」
「なんだよ!!」
「神社、逆なんだけど……」