彼氏の上手なつくりか譚





鳥居に着くと、真奈と中越くんが並んで立っていた。


真奈は赤の浴衣。いつもはちょっとチャラっとした私服だけど、今日は、古風で清楚な印象を受ける。


対する中越くんはというと……着物に羽織を羽織っていて、袴を履き、草履。腰にはこないだ買った木刀を差していて、髷はさすがに結ってないけど、伸びた坊主頭が、妙にしっくり来ている。


私は確信した。彼は武士だ。


「そちらの方は、長州藩士ですか? 奇兵隊の方も一緒ですか?」


「そ、そんなに変か?」


「変です」


「なんかオレだけ江戸時代にタイムスリップしてきたみたいだな」


そう言って笑う上川くんの気持ちはわかる。


本来なら、上川くんのTシャツにネルシャツを羽織ってジーパンというのが普通____センスはないけど____なのかもしれない。


それが浴衣女子の中に一人武士を置くことで、江戸時代に早変わり。ホント、武士の力ってすごい。




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