彼氏の上手なつくりか譚





袖口にてをつっこんで歩く中越くんの姿は浮いた。


外国人が「サムライ! サムライ!」と寄ってきて、一緒に写真まで撮っている。


他人のフリをするのに精一杯だ。


「あれ、バカにされてるわよね?」


小声で真奈が言った。


「私もそう思う」


でも、本当に大変なのはこれからで、この後、私が気を利かして、真奈と上川くんを二人っきりにする。


そうなると、必然的に私は武士と二人っきりになる。


武士と二人っきり? 罰ゲームじゃん!


こんなので、どうやってこの人を好きになればいいというんだ!


「理沙、どうしたの? 頭痛いの?」


「え? あ、うん、ちょっと……」


でも、本当に痛いのは、あの武士だ。




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