彼氏の上手なつくりか譚
「と、とりあえず、たこ焼きでも食おうぜ!」
上川くんは案の定、ガッチガチに緊張していて、真奈も浴衣のせいか、どこかしおらしい。中越くんは知らん。
いつもより賑やかな場所なのに、私たちの輪はいつもよりも静か。
なんか、気まずい。
「お待たせしました。どうぞ」
熱々のたこ焼きを渡され、フーフー、ホロホロと一つ、食べてみると、たこが入っていなかった。
そりゃたまにそういうやつもあるだろうけど、まさか一発目で引くなんて……不吉な予感がした。
「いやあ、美味しいわね。上川の奢りだと、また一段と美味しく感じるわ」
真奈がたこ焼きを頬張りながらそう言って、上川くんの方をチラッと見ると、照れ笑いを浮かべていた。
……上川くん、気の毒だけど、これは褒めたわけじゃないんだよ。
「お、山田さん、頬にソースついてるぞ?」
武士に言われ、巾着を探ろうとしたら、武士がスッと私にハンカチじゃなくて、手拭いを差し出してきた。
「これ、使ってくれ」
「……あ、ティッシュ持ってるから大丈夫です」
ホント、徹底してる……無駄に。