彼氏の上手なつくりか譚
「……上川くんはカッコイイ」
「え?」
「上川くんは優しい。上川くんは面白……くはないけど、一緒にいると楽しい」
「ちょ、なんだよ、急に」
「上川くんはバカ。でも、上川くんは人のことは絶対バカにしない。上川くんは自分の話ばっかり。でも、人の話は真剣に聞ける。上川くんは将来のこともちゃんと考えてる。頑張ってきたサッカーを辞められるくらい、真剣に考えてる。そして、上川くんはいつだって一生懸命。一生懸命に何かを一途に頑張ることができる」
そんな上川くんのことが、私は、きっと、でも、
「自信持て! キミにはできる! できなきゃ嘘だ!」
少なくとも上川くんという人間は、私をここまでの気持ちにさせたんだ。
だから、できなきゃ嘘だ。
「はーっ……」
「ちょ、理沙ちゃん? 太極拳でもするの?」
相変わらずのバカ(笑)確かに太極拳に見えるかもしれない。
でも、私がしたかったのは、こうだ。
トンッ!
上川くんの足が前に出る。その後ろには道ができる。
私から離れ、真奈に近づく道ができる。