彼氏の上手なつくりか譚
学校に着くと、噂というものは一体どこからやってくるのか。
もう上川くんと真奈が付き合っているという話題で、持ち切りだった。
「めっちゃショック! 私、秘かに上川くんのこと狙ってたのにー!」
と岡本さんが一人座って数学の教科書を開いている真奈にも聞こえるような声で言った。その目は睨んでいて、ああ、怖い。
その怖い視線からなるべく入らないような角度で真奈の席の前の席に座った。
「もうみんなに喋ったの?」
小声でそう聞くと、真奈は「まさか!」と岡本さんにも聞こえるくらいの声で言った。
「こんなこと自分から話すバカなんていないわよ!」
そう否定したけど、私は一人、そんなバカを知っている。
「真奈、早く上川くんの口、縫いに行った方がいいよ?」
「そうね。私、次の休み時間に家庭科室でミシン借りてくるわ」